『楽園』読了! 面白さの秘訣はスケール!

表題の通りです。

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『リング』や『らせん』等のホラー小説で有名となっていた作家のデビュー作ですね。

来年度公募予定の「日本ファンタジーノベル大賞」へ向けて執筆を準備しています。

ついては過去の受賞作を読んでいます。

第2回優秀賞受賞作となります。この回は大賞作該当なしとの回であり、優秀賞が2作選ばれました。そのうちの1作となります。

これがファンタジーだ!

とでも言わんばかりの物語でした。

 

物語のあらすじ

遠い昔のモンゴルに、愛し合いながらも別れ別れになった男女がいた。2人の魂は、伝説の「赤い鹿」の精霊に守られながら、18世紀の南海の小島、現代のアメリカにと、1万年の時を越えて生まれ変わっていく

あらすじ詳細(超ネタバレ)

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あらすじが簡潔に書かれていることからわかるように時間のスケールが長すぎます。物語の完結までおおよそ一万年です。物語は3章構成です。

第一章 神話

有史以前の時代。モンゴルのゴビ砂漠で生活をしている人々がいます。放牧を主とするタンガータ族。成人を迎えようとしているボグド少年は絵の才能を持っていました。その才能故にタンガータ族の禁忌である「人を描く」ということをしてしまいます。その人物は最愛の想い人ファヤウを描くのでした。ボグドは犯してしまった禁忌を打ち破るために、成人の儀式においては伝説の赤鹿を仕留め、強い精霊をまとうことを願います。困難の果てに儀式は成功し、好きな女性を見事娶ることに成功しました。子も成して、順風満帆な生活を送っていたボグドでしたが、自分自身が描いたファヤウの絵が原因で北の部族がタンガータ族へ奇襲を仕掛けます。結果男は殺され、女は戦利品として連れていかれます。赤鹿の加護を得ているボグドは虐殺から逃れ、連れ去られたファヤウを追いかけます。

数か月に及ぶ北進により、北の部族はベーリング海峡を越えてアメリカ大陸へ渡ってしまいました。

ボグドは北の部族を見失い、失意の元タンガータ族唯一の生き残り長老と死者の弔いをしながら、ファヤウを追いかける方法を長老に求め続けた。

南進を行い、追って東へ向かうことを案内され、ボグドは旅に出た。やがて南端へたどり着き、海を越えてファヤウとの再会を果たすことを願って筏を作り、大海原へと飛び出した。

理解を助けるために西向くが地図に矢印を書きました。

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紫の〇印がタンガータ族の生息範囲(アルタイ山脈のふもとにあるゴビ砂漠)です。たぶんここです。

赤の矢印が北の部族の動きです。

青の矢印がボグドの動きです。そうです、彼は追跡の果てに精霊の加護を得ているボグドを殺すことを恐れた北の部族により北の海の果てでイカダで放流されます。そのあと、南進し再度、イカダで太平洋への航海に乗り出しているのです。砂漠の民でありながら、海に生きようとした強い決意が見えますね。

この作品は作者の趣味かわかりませんが、イカダが多いのです。

第2章 楽園

大航海時代を経て、多くの船乗りが未知の薬草、商品を求めて多くの船が航海している。ある捕鯨船が難破し、各乗員が生存をかけ、ボートに乗り合う。

様々な不運に見舞われながらも、乗組員は3人までと人数を減らしながらも、タロファへと漂着する。

手厚い看護を受けながら、3人は豊かな自然に癒される。船大工の指導のもとイカダの作成を行い、太平洋の潮流に乗りながらアメリカ西海岸への帰還を図る。

赤鹿の壁画を「神」とあがめる島の住民、そして東へ海を渡ろうとする島民。なぜ渡ろうとするのかの理由すらもわからない。わからないけれども、東へ行く必要があるのだと言う島民と共に島を後にしようとする。

第3章 砂漠

舞台は20世紀末のアメリカ

インディアンの血を引くレスリーと、タロファから西海岸へ漂着したかつてのタロファ島の住民の子孫であるフローラが劇的な出会いを果たして、結ばれる。

第3章に限りイカダはないです

構造について

前の項目でいろいろと茶々入れてますけど、シンプルに構造を説明するとこれです。

第1章 ボグドとファヤウの出会い、別れ

第2章 ボグドが辿った軌跡を説明する。しかし、彼はアメリカ大陸へ向かうことはできなかった。諸島で子を成し、赤鹿の壁画を残し、「日が昇る方へ進み続けろ」という言い伝えを守ろうとするボグドの子孫の物語。

第3章 ファヤウの子孫とボグドの子孫が出会い、強く惹かれあう。

物語の魅力というか、作者の戦略

第1章から第3章までが文章の色が違う。

神話では、神話足らんとする重厚な物語を簡潔に描かれております。

楽園では、豊穣の地である楽園へ海洋冒険の末にたどり着くハラハラドキドキな文章です。

砂漠では、現代社会の愛や恋につかれた女性と軽薄な男性であるレスリーが互いにひかれあっていく現代を舞台にした恋物語です。

処女作品というのはその作者の原点にあるものであると考えたときに、作者は作者自身の能力や、自身の作品の方向性をここで明確に示しています。

古代史も、海洋冒険譚も、地底湖の冒険も描くことが可能であるという自分の力を存分にアピールした作品のように思います。

魅力的なキャラクターはこいつだ!

第2章 楽園 

 生き残る船乗りのうち一人、タイラーです。彼は物語においてのジョーカーのような存在でした。彼はすべての事態においてどのような状況にあったとしても、常に冷静沈着です。かといって、冷めているわけではないのです。人並みな道義心という物を持ち合わせています。しかし、生き残るための選択で、人肉を食するシーンは迫真でした。そして、その人肉食については、一番幼い(とは言うても、18歳ですが)船乗りの背中を後押しするために肉を口元に押し込み、無理やり咀嚼させるタイラーアニキの強さはほれ込むところがあります。

彼は戦士でした。常に戦いを求め続ける戦士というキャラクターでした。そして、その戦士の闘争の対象は生への渇望であり、自分たちを裏切った他の乗組員を殺すことを目的とするほどの純粋な闘争心です。

 「戦士はなあ、踊りながら死ぬんだ」 文庫版 173P

こんなかっこいい台詞を吐かせることができますか。残念ながら私にはまだできません。これはかっこいい。

こいつは完成された人格として作中では描かれています。3人の船乗りの間でリーダーとしてのふるまいを行い、そして彼は最後に戦士としての役目を全うして死ぬのです。壮絶でした。アニメはぬるかった

結論(収獲)

ありきたりなテーマで良いのでしょう。

しかしながら、この時を超えた愛という形を描く上での陳腐なこのテーマ。

このテーマをどのように料理をしてみせるのかということをアピールポイントなのかもしれません。

――目指せ千冊――

ハイファンタジー(3冊読了)←1冊増!
ローファンタジー(2冊読了)
SF(3冊読了)

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